家出少女と風花寮
「はいはい。急がないと学校に遅刻してしまいますよ」

大家さんの鶴の一声で、私達はご飯を掻き込み。

「青木君の鞄は私が持ちますよ」

「俺は青木を持とう」

「ねえ、僕は荷物? ねえ荷物?」

私は自分の鞄と青木君の鞄を両肩にかけ。
北山君は青木君を米俵よろしく担ぎ、空いた手に自分の鞄を持って。

「いってらっしゃい」

今日も和服美人の大家さんに見送られた。








今日の授業も、ちんぷんかんぷんでありながらもノートをとった。
やがて授業終わりのチャイムが鳴り。

「……それじゃあ、今日の授業はここまで。今日のとこ次のテストに出すからなー」

と言って、教師は教室を後にした。

そういえば、テストって、いつからだったっけ?

「福井氏ー!」

「青木君、聞きたいんだけども」

「なになに? 今日の萌え情報?」

「テストって、いつからだったかな?」

萌え補給できて、幾分元気を取り戻したらしい。
いつものように席に来た青木君に聞いてみると。

「1週間後だよ」

さらっと言った彼。

1週間後に中間テストが始まる。
まずい、全く勉強してないんだけど……。

「おや、福井氏、顔色が優れないようですね」

「ごめん、青木君。赤点とったら追試あるから、しばらくBL講座は控えさせてください………」

手を合わせてお願いすると、彼はキョトンとした。

「もちろん、補習も、メンバーによっては萌だけど、より良い萌を堪能するために合格点取るよ。福井氏はそんなにテスト危ないのかい?」

「お恥ずかしながら………」

キャピーン!
青木君の眼鏡が光を放った。

「では、僭越ながら僕がお教えしましょう」

「BLを………」

「勉強も、ですよ。……まったく、福井氏は僕の事なんだと思ってるのですか」

心外だとばかりに腕を組み、ぶつぶつ言っている青木君。
『も』なんだね。

「ひとつ、尋ねるんだけども」

「なんだい?」

「青木君勉強できるの?」

授業中の誰と誰が隣同士でいちゃついてたとかの報告をよくくれるのだ。
授業聞いていないのではないかと。

「舟を漕いでる福井氏と一緒にしないでおくれ。この眼鏡は伊達じゃないよ」

「なくても日常生活に支障はないでしょう?」

「そこまで弱くないからね。けど、萌をより鮮明に見るためには異物を挟むのも致し方ない。双眼鏡も然り。でも本当は裸眼で拝みたい! 直接目に刻み付けたいっ!!」

なんの話をしてるんだ。

授業開始のチャイムが鳴る。

「おっと、もう戻らなければ。では福井氏。今日帰ってから早速始めましょう」

苦手な教科、準備しておいてくださいね。
との事で、風花寮に帰ると、宣言通り青木先生による勉強会が開催された。

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