家出少女と風花寮
翌日も、勉強会は開催される。
同じように、居間に教科書ノート問題集を広げ、それらに向かう。
隣で青木君は教科書の黙読。
私の手が止まると、助け舟を出してくれた。
そこまでは昨日と一緒。
今日は。
「ゆきちゃん、今度映画見に行かない?」
中島健吾という邪魔者と。
「今勉強に関係のない話しは控えてもらおうか」
それを牽制してくれる北山君も居間にいる。
邪魔者の前には教科書もノートも存在せず。
北山君は青木君と同様、教科書黙読である。
「関係あるよー。テスト終わった後のご褒美のハナシ!」
邪魔者は私とノートの間に顔を滑り込ませてくる。
「知ってる? 今や女子中高生に大人気のケータイ小説家、『ゆき。』の作品が今度映画化するんだよ。そしてなんと、主題歌の作詞もするんだよ。見たいよね!」
「邪魔者はひっこんでろ!」
隣の青木君が邪魔な頭を押し出した。
「…男に触られても嬉しくないんだけどぉ」
「僕だって嬉しくないよ!」
やいのやいの、口論が始まる。
巻き込まれたらたまったものじゃない。
私は卓の空いたところに移動し、そこに荷物を移した。
さて。
教科書、ノート、問題集。
眺めてみてもわからない。
頼りの青木君は、中島君と喧嘩中。
どうしたものか………。
こめかみにシャーペンを押しつけ、問題に頭を悩ませていると。
横にすっと入ってきて、助言をくれる。
「ここは、これを使ったらいい」
「…………」
少し考えて。
「なるほど。ありがとう、北山君」
「がんばれ」
ぽんと頭を撫でてから、北山君は黙読に戻った。
青木君と中島君の言い合いをBGMに、黙々と勉強を進めていると。
「いたっ!」
青木君が声をあげた。
「……………」
「中島………」
「オレなんもしてないよ!」
私と北山君は疑惑の目を向ける。
「青木、中島に何された」
「オレがやったって決定事項?」
「大丈夫、目にゴミが入っただけ。ちょっと顔洗ってくる」
青木君はふらつきながらも部屋を出た。
その背中を見送ってから、中島君に視線を向けると。
「言ったでしょ、オレは無実だって!」
ふくれていた。
「いや、あの、ごめん」
「悪かった」
私たちは、とても申し訳なくなった。
「あーもー気分悪い! オレもスッキリしてこよー」
肩を怒らせ出て行く中島君。
「…………」
「……………」
「………なんだか、とても悪いことをしてしまいました……」
「……全ては、あいつの日頃の行いが悪いからだ」