家出少女と風花寮
4号室

園田秋という双子

ある日の夕食時のこと。

「双子は、兄と弟、どっちが左がいい?」

「オレなら兄かな」

「僕は弟だね」

青木君と中島君に目の前で話題にされ、顔を朱に染める兄、園田アキ。
対して弟、園田シュウの表情は変わらない。

「少なくても、園田双子で兄が攻めとか考えられないんだけど」

「いやいやりおちゃん、そこは意外性の兄ってことはない?」

「こんな赤面して、タチができるの?」

青木君は不躾に園田兄を見る。
居心地悪そうに小さくなる園田兄を、園田弟がその広い背中に隠す。

「そんな目で見るな、兄さんが減る」

「きゃー! 今の見ました奥さん!?」

「みたわよぉー!」

不審者2人から兄を守る行動も、彼らにとっては美味しいイベント。

「双子っていいわねぇ!」

「どんなシチュでもこなせるものねぇ!」

「でも、小さな兄が攻めるのはちょっとぉ……」

「だからこそ、クールな弟のリードでー」

「弟の襲い受けだね、なるほど」

何度でも言おう。
今は夕飯中だ。
風花寮の住人が一堂に会している。

そんな中でのふたりの話しは如何なものか。
園田双子でなくても、気まずくてご飯が進みませんわ。

「青木君、中島君」

この温度差の激しい空気を察してくれた大家さんが止めに入る。

「食事中、静かにしなさいとは言いません。ですが、自重はしてください。品がないですよ」

にっこり、大家さんの黒い笑顔に立ち向かう勇者はいない。

「す、すみません……」

「さーせん………」

大家さんは、風花寮で最強。
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