家出少女と風花寮
翌日。
居間に青木君と中島君以外の住人が揃い、朝食をいただいていると、青木君が降りてきた。
「おはようございます…………」
「おはよう、青木君。その………大丈夫?」
「福井氏よ、何の話だい」
「ほら、その、顔色が…………」
「気遣い無用! 僕は掘られてないからね!」
「…………」
何の話だろう。
「だからといって、掘ってもないよ! 中島氏とはなんの関係ももってないからね!」
「…………」
無駄に言い訳をして、墓穴を掘ってる気がするのは気のせいでしょうか。
そこまで否定されると、疑ってくれと言っているように聞こえます。
「あ、中島君……」
「ひぃっ!!」
「…………」
名前を出しただけで、卓の下にスライディングする。
陰になったそこで、震えながらも警戒していた。
これは絶対、何かあった。
「ゆき、そっとしといてやれ」
「………はい」
北山君に言われ、青木君を覗き込むのをやめた。
ちょっと面白かったのに。
園田弟はせっせと魚を崩し、兄の皿と交換する。
大家さんは微笑みをたたえ、見守るだけ。
本物の中島君が青木君を呼び、姿を見せるまであと数秒。