家出少女と風花寮
風花荘
数年後。
大学に進学した今も、風花寮だったところの敷居を跨ぐ。
「ただいま」
「おかえりなさい」
大家さんの声を聞いて、2階の自室に入り、机に向かう。
本来なら、学生寮であるここは、高校卒業とともに出ていかなければならない場所だった。
しかし、大家さんが。
「次の入居者も決まっていませんし、腐れ縁の学生マンションもありますから」
とのことで、学生向け施設を撤回。
『風花寮』から『風花荘』に名前を変えた。
私が入寮した時のメンバーも、そのまま入居している。
青木君は、欲に忠実な腐男子で。
中島君は、青木君を追い続けている。
園田双子は、喧嘩するほど仲がいい。
大家さんは、そんな私達を導いてくれた。
高校生の時と比べて、私はどれくらい変われたでしょうか。
考え込んでいると、扉をノックされた。
「ゆき、ご飯」
北山君は、優しさに拍車がかかっている。
「今行きます」
ノートを閉じて、部屋の前で待っている北山君と一緒に、皆の集まるリビングへ向かう。
机の上に残された、一冊のノート。
閉じた表紙には、『家出少女と風花寮』の文字があった。