【完】お隣さんは泥棒さん!?
………

……





「とりあえずお茶でもどーぞ」


「お構いなく!…てか、本当ごめんっ」




彼は今にも床に額をこすりつけそうな勢いであたしに土下座してきている。


「もー土下座やめてよ。さっき助けてくれたし、話くらいは聞くから」


「…ありがとう」


「ほら、そっち座って」



聞きたいことはたくさんあった。

でも、一気に聞いたら彼は困っちゃうだろう。



…どう見てもあたしより年下な気がするし。


だけどよく見るとスーツを着て、童顔だけど整っている顔立ちだ。

殴られた後とか少しだけ乱れたスーツも色っぽさを演出してる気がする。



髪型も茶髪のウルフカット、キラキラ光るアクセサリーだって身につけてる。



…これはあたしと同職かもしれない。





「一週間くらい前の話なんだけど、鍵失くしちゃってさ。それでここのマンションのオーナーに頼んだら今朝新しい鍵って言ってもらったんだよこれ」


そう言って彼は持っている鍵をあたしに差し出した。


「この鍵が来るまでカードロックだけで鍵してたんだけど、今日はほら…君に襲いかかってた奴に殴られてちょっと意識朦朧としてたしお酒も入ってたから酔っててさ。多分部屋一つ間違えたんだよ。ちょっと来て」



あたしは彼に言われるまま着いていった。


そして部屋の外に出て右隣の部屋の前に立つ。


「…やっぱり。俺間違えたんだ」


「ここが…」


「そう、俺の部屋。間違いないよ」

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