【完】お隣さんは泥棒さん!?



中に進んでいくともっときらびやかな世界だった。


まるで夢の国にでもいるような。

現実から逃げてきたような気がする。


あたしがそうやって思うってことは、現実から逃げたいのかもしれない。





「今日は楽しい時間にしよう。気を許してとは言わない。ただ、少しだけ花梨の時間を俺にくれ」



ドキン…



ああ、女の子たちはこういうのに落ちていくのね。


騙されて、そして飲み込まれていく。

全てをこの人たちに…。




「直人さん、一番高いお酒持ってきました」


「溢れるくらい花梨に注いでやれ」


「はい」




ドロボーは他のホスト達には少しだけ冷たく、でもあたしに話しかける時だけはあたたかい。


「花梨お腹すいてない?」


「…すいてる。でも今の時間帯食べたら太っちゃうからいらないわ」


「バカだなぁ。言っておくけど花梨は痩せすぎだからね?少し肉づきがいい方が男にとっては嬉しいんだよ」


「…見るだけなら痩せてる方が綺麗でしょ?」


「触れたときに物足りないんだよ」


「あたしに触れていい男なんていない。誰一人として」


「ちょっと待ってろ」




あたしの言葉は場を盛り下げるにはぴったりだった。

・・・好きで言ったわけじゃないけど。



まわりもしんとしてるし、ドロボーも奥行っちゃった。

あたしはやっぱり『夜の蝶』という皮を被らなければ誰も寄ってきてはくれないんだ・・・。
< 16 / 97 >

この作品をシェア

pagetop