【完】お隣さんは泥棒さん!?
中に進んでいくともっときらびやかな世界だった。
まるで夢の国にでもいるような。
現実から逃げてきたような気がする。
あたしがそうやって思うってことは、現実から逃げたいのかもしれない。
「今日は楽しい時間にしよう。気を許してとは言わない。ただ、少しだけ花梨の時間を俺にくれ」
ドキン…
ああ、女の子たちはこういうのに落ちていくのね。
騙されて、そして飲み込まれていく。
全てをこの人たちに…。
「直人さん、一番高いお酒持ってきました」
「溢れるくらい花梨に注いでやれ」
「はい」
ドロボーは他のホスト達には少しだけ冷たく、でもあたしに話しかける時だけはあたたかい。
「花梨お腹すいてない?」
「…すいてる。でも今の時間帯食べたら太っちゃうからいらないわ」
「バカだなぁ。言っておくけど花梨は痩せすぎだからね?少し肉づきがいい方が男にとっては嬉しいんだよ」
「…見るだけなら痩せてる方が綺麗でしょ?」
「触れたときに物足りないんだよ」
「あたしに触れていい男なんていない。誰一人として」
「ちょっと待ってろ」
あたしの言葉は場を盛り下げるにはぴったりだった。
・・・好きで言ったわけじゃないけど。
まわりもしんとしてるし、ドロボーも奥行っちゃった。
あたしはやっぱり『夜の蝶』という皮を被らなければ誰も寄ってきてはくれないんだ・・・。