【完】お隣さんは泥棒さん!?
外に出た俺はポケットに入っていた煙草を取り出して、一本吸った。
白い煙が黒い空に飲み込まれてゆく。
久しぶりの煙草はとてつもなく不味かった。
『直人さん。煙草、吸わないでほしい』
『直人さんだけが本当の私を見てくれる』
『一生直人さんだけを愛します』
アイツは俺を捨てて、挙句自分の命も捨て去った。
アイツの言葉で煙草をやめたし、ホストを辞めることも本気で考えていた。
『ごめんなさい。直人さん』
最後に掴めなかったアイツの手。
俺のせいではないと分かっていても、罪悪感が背中にある。
もっと早く走っていれば、もっと早くあの場所に着いていれば。
俺はアイツを助けてやれたのかもしれない・・・と。
「…ひっく。うっ…」
ふと通りかかった人通りの少ない公園。
誰かの泣き声がした。
俺は煙草を地面に捨て、足で火を消してから公園に入った。