【完】お隣さんは泥棒さん!?


お皿を洗い終えると、隣から甘くて優しい香りが漂ってきた。


「…プリン早く食べたい」


「まだ冷やさなきゃいけないから待って待って」


「うー…」


「花梨まるで子供だな笑」



あたしは子供の頃に帰っていた。


もう反論さえしなくなって、ただ純粋にプリンを待っていた。




そしてあたしは一言ずつドロボーに語り始める。


「プリンはね。お母さんとの思い出なの」


「へぇ…作ってくれてたの?」


「うん。すごく美味しかった。お母さんも優しくて、あたし幸せだった」


「…今、お母さんは?」


「…お母さん。お母さんね。今刑務所にいるわ。無期懲役だって」




衝撃的な言葉だったのか、ドロボーの手が止まった。


そしてゆっくりとあたしの方を向く。



「お父さんをね、殺したの」



あたしはそれを目の前で見ていた。


お父さんが血を流して、だんだん冷たくなっていく姿を。





「聞いてごめん」


「ううん。いいのよ。そのかわりプリン二個食べさせてね」


「…三個やるよ」


「やった♪」




だんだんとドロボーに心を許していく自分をあたしは受け入れつつあった。


だから、少しだけ昔の話をしたのかもしれない。
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