【完】お隣さんは泥棒さん!?


「美味しいか?花梨」


「美味しい!」


「花梨は好き嫌いがないからいい子だなぁ」


「おかわり!」


にこにこと笑顔のまま「分かった」と返事をし、お父さんはわたしのお皿を持ってキッチンの奥へ入っていった。


わたしは美味しいカレーを心待ちにしながら、何故かお父さんの鞄から少しはみ出している紙切れが目に入った。


「これなんだろう」


紙には『金返せ』『いい加減にしろ』『俺らの女に手出しやがって』『家族にばらしますよ』

訳の分からない言葉たちが並んでいた。




「花梨!!!」


「ひゃあっ!!」



お父さんは今持ってきたカレーを皿ごと床に叩き付け、わたしの見ていた紙を奪った。


「び、びっくりした。どうしたのお父さん」


お父さんの表情からは笑顔が消え、見たことのない顔になっていた。


「花梨は大きくなったなぁ」


「え…?うん…」


「体つきも大人っぽくなって、俺も嬉しいよ」


「…お父さん?」


「俺なぁ、お母さん以外に好きな人がいたんだ。そいつはヤクザの娘だった。それを知らずに金を借りた。仕事も辞める予定はないし、大丈夫だ絶対に返せるって思ってた」



好きな人、ヤクザ、お金…?


幼いわたしにはまだ何がなんだか分からなかった。


「体の相性も良くて、お母さんとのセックスレスも気にしないでいれたんだけど…この有様だろ?最近抜けてないんだよ花梨」


「…や、やだ」


本能でわたしは危機を感じ取った。

お父さんは…
きっとわたしを…
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