【完】お隣さんは泥棒さん!?
カリンは一口飲むと目を閉じ、妖艶な顔をした。
…あまりにもそれが綺麗で俺は少し見とれてしまった。
「このカクテル、あなたそのままなのね」
「…そんなこと言われたことありませんよ」
「じゃあそれだけあなたのことを見かけだけで追いかけている人たちばかりってことね」
「…カリンさんには俺の何が分かるんですか?」
「さぁね」
惹きつけておいて離そうとする。
これがカリン。
俺はこのたった数十分の中でカリンに惹きこまれた。
「聞きたいですか?俺の過去」
「結構よ」
「同じ香りがするんでしょう?」
「同じ香りがするからこそ、知りたくないのよ」
「…じゃあカリンさんのこと教えてくださいよ」
カリンは俺を横目で見た後こう言った。
「時間切れ。もうあなたいいわ」
カリンの言葉通り、向こうから直人がこっちに向かって歩いてきた。
「カリンさん。こんな俺の相手をしてくれてありがとうございました。近いうちにまた会いましょう」
「こちらこそ」
俺は名残惜しいカリンの元を離れて、店の外へ思わず出た。
店内とは違い冷たい風が俺の体を撫でる。