【完】お隣さんは泥棒さん!?
「いい拳だったぞ。でもな、まだまだ子供だ。お前は」
親父はその言葉の後、右の拳で思い切り俺の腹を殴った。
「…ぐっ」
「なぁ、お前は隙をついて殴ることしかできないんだよ。こうやって何発も何発もやることはできない」
言葉通り親父は俺の腹を何度も何度も殴る。
避けたくても、拳を受け止めたくても左手で体を固定されていて動けない。
「何が気に入らないのか知らないが、俺を殴るってことはこういうことだ」
「…くっ…そが…」
親父は俺の体を遠くに投げ飛ばし、唾を吐いた。
「出直せ」
「…てめぇ…だけは許さねぇ」
「殴る前に要件を言え」
「…花梨のことだよ」
親父は花梨の名前を出すとピタッと動きが止まった。
俺は立ち上がり、親父をまっすぐに見つめる。
「…はぁ…はぁ…。どうして花梨に近づくなって言ったのかようやく分かった。花梨が子供の頃にお前…借金を返す代わりとして…花梨を…犯しただろ」
親父の顔がみるみるうちに変わっていく。
それは鬼のような形相に。
「…誰に聞いた」
「一度だけじゃなく何度も、何度も。そして今もお前は花梨に執着している」
「…誰に聞いたって聞いてるんだ。答えろ」
「花梨が顔を知らないのをいいことに優しい顔をして世話をしている。…最低だな」
「答えろ!!!!」
大声を出さない親父が周りが驚く声で叫んだ。