【完】お隣さんは泥棒さん!?
「い、いやああああああああっ」
あたしは見たくなくて、手で顔を覆った。
信じたくなくて、聞こえてくる殴る音とか血が流れる匂いもすべて遮断したかった。
でも、現実はあたしを飲み込んでゆく。
「カリン、どうしたんだ」
「嫌、嫌だ…」
「ほら怖くないよカリン」
修ちゃんに触れられそうになった手をあたしは払いのけ、一目散にドロボーのそばへ駆け寄った。
「やめて!やめてやめてやめてえええええ!」
あたしの剣幕に驚いたのか、周りの男たちは一斉に後ろに下がる。
「…ねぇ、ドロボー?大丈夫?」
聞こえてくるのはひゅーひゅーとか細い呼吸音。
顔は真っ赤な血でいっぱいだった。
「嫌だ。どうしてこんなことに…。ドロボーのばかっ」
あたしの目からは大粒の涙が零れ落ちた。
涙を拭うために目線を少し上げると、奥に見たことのある女の人が倒れていた。
「…嘘」
それは清香ママだった。
あたしを拾ってくれ、大切にしてくれたママ。
大切な人。