翻弄される男

☆:*゜:*。.


「あの……上野さん、ランチいいとこありませんか?このあたりは制覇しちゃって」

彼女が隣人に今日も話し掛けている。

「ハイハイ、今日はランチについてね。てかさ、前から思ってたんだけど、何で俺?」

「だって、上野さんって“モテメン”だったんですよね?やっぱり流行りのモノとか、場所に詳しいのかな……って」

“だった”って。
さりげなく失礼だろ。

「おい……!まあ、もう、いいよ……」

そんな天然の彼女に、免疫力がついたのか、慣れたふうに上野は続ける。

「俺なんかより、それを言うなら島田先輩でしょ?相方なんだから、好みとか知ってるだろうし」

「だけど、だけど、島田先輩は敷居が高いって言うか……そんなどうでもいい話なんて出来ないです」


どうでもいい?


俺は、思わず笑いを堪えた。

同じ事を思ったのか、上野も思わず苦笑している。

「その、どうでもいい話に、俺は真面目に答えてたのかよ〜」

「いや、あ、あの!どうでもいいとは、そういう意味ではなくて!あ!そう!この間、上野さんが薦めてくれた漫画!凄い面白かったですよ?えっと、オーバーオール?」

「ワンピースな!何だよ、オーバーオールって。そもそも海賊がワンピース着て、更なるワンピースを求める話じゃないから。って、あーマジ俺も何言ってんの〜」


隣人の上野は、迷惑そうに見せながらも、まんざらでもないようで、どこか楽しそうにしている。

あの天然のひなのに、振り回される上野を見るのは、どこか面白い。


「あ!ちょっ!高田先輩!」

ふと、視線が合ってしまい、上野がモゴモゴと口を動かして、助けを求めるが、俺はわざとらしく視線を逸らした。


「高田せん~ぱ~い!!」





(完)


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