HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
『夫』



その響きに私の全身を駆け巡る血が顔に集まってくる。



「顔が真っ赤だぞ。俺がお前の夫になるコトがそんなに嬉しいか?」



彼は私の反応に唇の端を上げ、意地悪く微笑む。



「全然、嬉しくないんだから…」




顔を真っ赤にして反論しても、全く説得感がないコトは承知していた。逆に部長に満足感を与えるだけだった。




部長の傲慢に満ちた微笑が憎くて憎くて堪らない。





「貴方は社長の椅子を手に入れされすれば、私じゃなくてもいいんでしょ?」



「俺は優奈じゃなきゃダメだ。俺はお前に心底、惚れてんだ!」



部長は真剣な瞳と声音で嬉しい台詞を吐き捨てる。

疚しさなどない透き通った純粋なキモチを私にぶつけて来る。

部長はいつも小細工なんかせず、自分のキモチをハッキリ言う人。

嘘なんてつかない…


「嘘つき!!」

そうわかってるのに、もっと部長の愛言葉が訊きたくてワザと罵った。


佐野部長は喚く私に吐息を漏らし、椅子から立ち上がった。



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