HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「お口を開けて…」



私は部長の言われた通りに口を開けた。



部長が生ハムを私の口に押し込む。




「美味しい…ワインも飲みたくなるね」




「優奈は飲兵衛だな」



部長の罵倒には愛がある。




生ハムサンド、カツサンド、卵サンドが完成した。

料理の苦手な私も部長の力添えで、サンドイッチを作る事が出来た。

私はその達成感に高揚する。


出来栄えも近所のパン屋さんの店頭に並べてもおかしくないくらい完成度が高い。


「店で売ってるような感じ…部長、パン屋さんできますね」





「あのさ…昨日もちゃんと言っただろ?柾史と呼べと」




恥かしがり屋の私に出来ないコトを強要するのは立派ないじめ。




「いじめないでよ」




私は部長に抗議するように睨み付ける。



「苛めじゃない俺のは意地悪だ。俺は優奈が可愛いから意地悪するんだ。愛情表現の一つだから、いい加減に理解しろ」




部長は自分のいじめを愛情表現の一つだと言い切る。


でも、私から見ればそんな愛情表現は要らないワケで、逆に迷惑な感じ。



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