HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
残業する柾史の姿を想像して、必死に目の前のワインの誘惑と奮闘する。
「ほら、羽瀬さんが目利きしたワインなんだから飲まないと」
井上さんが私の空のワイングラスにワインを注いだ。
「今夜はちょっと、調子が悪くて…」
「そう言わずに…」
井上さんは全く私の言葉を訊き入れなかった。
「それよりも、羽瀬さん…佐野部長がどう優しい?」
営業部に配属した高坂茉奈美(コウサカマナミ)が問いかける。彼女は黒髪ボブの清楚な美人。
新入社員にして営業部のマドンナになりつつあるらしい。
柾史は仕事に対しては厳しいけど、人当りはいい。(私以外には)
男性社員達にも好かれ、柾史を悪く言う人は社内にはいない。
でも、私には意地悪でその上Sで、仕事中も常にHなコトを考えているとんでもない男。
彼は私に見せる自分が本当の姿だと言い切っていた。
テラなイケメンなのに…飾らない柾史。
私も柾史には飾らず、自分の素を出しているし、お互い様なんだけど。皆と同じようにイケメンの柾史を見て、目の保養や憧れで見れない所が少し寂しい。