HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~



誰も知らない彼の姿を知るのは私だけ、それが特別のように嬉しい反面もあるけど。

果たしてどちらが幸せなのか判らない部分もある。



余りにも柾史が完璧な男過ぎて、本当に自分の恋人兼婚約者だとは信じ難い現実があるのかも。

「あの…言っておくけど、佐野部長は私が狙っているんだから…高坂さん、ダメよ」



「ダメって…」


高坂さんは不満げな顔で井上さんを見つめる。




「佐野部長は私のモノなの!」



井上さんの思い込みの強さに言えしれない恐ろしさを感じた。井上さんの完全な片思い状態なのに、彼女の独占欲は少し異常だった。柾史に本気で惚れているんだろう。



花見の時だって皆を白けさせるし、柾史も井上さんと笑顔で接していたものの、警戒していた。


「二人は付き合っているの?井上さんの片思いでしょ?」



高坂さんも井上さんに負けじと言い返す。


和気藹々で始まった女子会に暗雲が立ち込める。



「高坂さん…貴方、佐野部長に本気なの?」


「佐野部長は社内でも一番の優良物件でしょ?私以外にもライバルは沢山いるわ!」















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