HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「私の為に一曲、あそこのピアノを弾いてくれと言いたいの?」



店の隅に置かれた黒いグランドピアノを指差す。



「俺、そんなコトしないから…」


伊集院さんは強い口調で返して、不機嫌に眉を顰める。




「俺、事故でピア二ストを辞めたんだ。辞めたと言っても、弾けなくなったワケじゃない。普通には弾ける。でも、ピアノを弾くよりもしなければいけないコトが出来た」




「それが、議員の出馬ですか?」



「そう言うコト。高校生の時は絶対に父上のように政治家にはならないと思っていたけど。政局を見ていると若い俺が政治家にならなきゃいけないと思う所があって…今は修行中の身だ」







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