HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「近江家はウチの叔父の銀行の大口らしい。だから、叔父も近江常務に見合いの話を持っていったんだと思う」




「私は昨日、見合い話を訊いたばかりで」



「ねぇ、この話はなかったコトにしてくれる?」


「伊集院…さん?」



「俺、付き合っている女が居るんだ。彼女は弁護士の卵で…俺達今はまだ…結婚出来ない」



「彼女、いたんですか…」



「この俺が彼女なしと思った?」



伊集院さんは不遜な顔で私に質問を投げつける。



「いいえ、そんなコトは…」



「色々と身分の違いもあるし、叔父さんも反対しててね…俺の見合い話を強引に推し進めたんだと思う。総理も叔父を説得してくれるって言うし…君には悪いけど、話はなかったコトにして欲しい」



伊集院さんは真摯に頭を下げた。



「私の方こそ…元カレと遭遇させておいて」



「あんな男は早く忘れて、他の男探した方がいいよ」





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