HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
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柾史から退職届に必要な書類を受け取り、私の退職は5月末。



引っ越しは今日だった。



私は隣の柾史の部屋のインターホンを鳴らした。



「どうした?」



「私、今日引っ越します。短い間でしたがお世話になりました」

会社で最後の挨拶はしたけど、これは引っ越しの挨拶。


どうして辞めるのかと宇陀さんに訊かれたけど、一身上の都合だと押し切った。
インテリア室の皆が私の退職を不思議がっていた。

惜しまれながらも、私は会社を辞めた。


「引っ越しは今日だったのか…」



「はい…」




白いTシャツにブラックジーンズ姿の柾史。


休日のせいか顎の髭は剃られていなかった。



「吉良は??」



「吉良さんは仕事です」



「休日なのに…大変だな」



「アイツの家で同棲するんだな。結婚するのか?」



「結婚は…まだ…」



「うまくやれよ」



「…はい」



柾史は寂しげな瞳で私を見つめ、吐き捨てた。







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