HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「吉良君は確か…31歳だったな」



「はい」



吉良さんはお爺様のペースで話を合わせる。



二人で世間話をしながら、徐々に吉良さんは自身の緊張の糸を解し、いつもの明るさを取り戻していった。




「優奈と結婚する意思はないのか?吉良君」




「結婚ですか?」




吉良さんは隣に座る私をチラリと見つめる。




「お爺様…私達は付き合ってまだ…日も浅いし…結婚なんて…」




「…わしは癌で余命半年だ。孫娘を一人残していくのは後ろ髪がひかれる」




「私だってもう22歳だし…一人でも大丈夫よ。お爺様…いつまでも小さな子供扱いしないで」




「…今はまだ…結婚は考えていません。ですが、何れは…それではダメですか?」




「少しは優奈との結婚を考えてくれているのか…安心した」
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