HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「優奈は俺がキスしようとしても逃げる…慣れない育児で疲れてるのは判るけど…自分の子供でもない…子を育てようとする俺のキモチを本当に判ってくれているの?」




恭介の飾らない本音の言葉が出た。




「…ゴメンなさい…恭介」




「いいよ。今夜はどうしても…受け入れて欲しかった。あんなモノを突きつけられたし…どうしても…一人では眠れなかった。でも、優奈にその気がないんなら仕方がない…。君は俺には芽衣子を忘れろと言うのに…君は近江部長が忘れられないんだ。まぁ、忘れられないか…すぐそばに…近江部長の子である正人が居るんだからな」




恭介の優しいテノールの声に黒い感情がこもっていた。



恭介の青い瞳は寂しげな色を浮かべる。



さっきまで私を求め、媚びた表情を見せていたのに急激に固い表情になった。

表情を失った恭介の端正な顔はそれだけで壮絶な冷たい印象を受ける。


「恭介?」

恭介の変貌に取り返し付かないコトをしたと後悔する。





私はベットから出て、部屋をスタスタと出て行った恭介を追い駆けた。




でも、私の足はマー君の泣き声で止った。












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