HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
譲の中では、私の存在は既に過去の女になっていたんだ…



あんなにスキだと思っていたはずなのに。涙が一滴も出ないし、胸が痛まないのはどうしてかな?




「アイツが譲か…」




「佐野部長…」



私のぶっかけたビールのせいで、佐野部長の髪は濡れ、スーツの肩辺りは大きなシミになっていた。




「直ぐに…タオルを・・・」




「いい…俺は先に帰ると皆に言った…お前も一緒に来いよ…」




「わ、私は…」




「…お前には今日1日…何回恥をかかされたと思ってんだ?俺のプライドはズタボロだ…責任取れよ」



「でも、私の部屋にバックを…」



「持ってきた…」




「私達二人で…歓迎会をエスケープすれば…皆に怪しまれます…」



「大丈夫だ…心配するな…」




佐野部長の顔は満面の笑み。


邪悪めいた目つきが気になりますが…




「羽瀬は俺の婚約者だと言っておいたから…堂々と帰れるぞ」



「ええ~っ!?」






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