HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
長尾君は、佐野部長のおかげでいつもの無口な彼に戻ってしまった。



「着いたぞ」



社用車をタイムズに停める。



私達は先に車から降りて佐野部長を待った。



「俺、佐野部長に嫌われちゃったかな?」



長尾君は肩を竦めて泣きそうな顔で私に問いかけて来る。



「ずっと…うるさいとは思っていたけど」



「俺は名屋先生から佐野部長のコトを訊いて、『オウミ』に就職したんだ」



「へぇーそうだったの…」




「仕事中に私語は慎め!お前ら、行くぞ」



部長は相変わらず不機嫌だった。



現場は昼間の陽光に反射してキラキラと輝くガラス張りの5階建てビルの3階。



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