HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
《9》 朝のセレモニー

~優奈side~

「支度出来たか?優奈」



私の部屋の玄関先で身支度の整った佐野部長が叫ぶ。



「女子は支度に手間取るんだから…もう少し待って下さい。部長」



「後2分で来いっ!!」



佐野部長は全く私の話を訊いていない。


非情に怒鳴り、私をビビらせる。



「2分じゃできないわよ!」


メイクの続きは車内でしようとメイクポーチをバックの中に押し込める。



「5、4、3、2、1……0」



私は佐野部長の0のカウントと同時に玄関先に出て来てギリギリセーフ。




「部長の約束通りに2分で来ました」




「いい子だ。優奈」


部長は口では性急に私を急かしておきながらも、優しく頭のてっぺんを撫で回した。



部長の言葉とは裏腹の態度に鼓動が跳ねる。





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