HONEY TRAP（１）~上司は身勝手な婚約者~

「どうぞ。佐野部長」



私が本当に佐野部長のコーヒー係になりつつある。




「新入社員の中でも一番可愛いんだって…羽瀬さん」



部長の皮肉げな言い方。



「仕事が彼氏？」



部長の耳は地獄耳だった。



「別にいいでしょ？」



「今はまだ…俺と優奈の婚約は公言出来ないから、仕方がないけど。彼氏ぐらい居ると言っておけ」



部長は私のコーヒーを啜りながら吐き捨てる。




「私はまだ…佐野部長と婚約するつもりはありません」



「まだ、そんなコト言ってるの？優奈に訊くよりも…カラダに訊いた方が早いか…」



部長は椅子から立って私に向かって身を乗り出す。