退魔術師
それはそうだ
亡くなった娘が目の前にいるのだ
そんな光景を見たら誰だって驚くだろう
それを見た退魔師は口に人差し指を当て左手の親指、人差し指、中指を蛍ちゃん向けて指差しながら何かを呟く
すると透けていた彼女の体がハッキリと現れた
母親がおそるおそる手を伸ばす
触れて彼女を強く抱きしめる

生き返った訳じゃないから、器に魂を借り入れしただけだから
と退魔師は続ける
家族は言葉を濁した
娘女の子は何故両親が泣いているのという顔をした
嫌本当はわかっていた
気がついていた
彼女は必死の笑顔で

おじいちゃん、おばあちゃんには赤いランドセルでしょう、お父さんには机を買ってもらってお母さんにはケーキを作ってもらうんだ
楽しみだな

語る少女はとても亡くなっているとは思えないくらい楽しそうだった
それは小さいながらも彼女自身がついた優しい嘘だった
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