もう弟なんてやめてやる。
「…陸、帰って来てくれたの?」

「………」

「違う、の…?」

「…違うよ。荷物取りに来ただけ」

「………まだ、幸くんの家?」

「…うん」



そう答えると
雫は黙ったまま、

肩を震わせて。


ポタッと涙が落ちて
シーツに染みを作った。



「………雫、」

「っ、………ったの?」

「…え?」

「あたし…のこと、っ嫌いに、なったの…?」



震える声で
絞り出すように話す雫に

俺まで泣きそうになる。


…嫌いになんか、なるはずない。


そう言いたいのに
声が言葉が出ない。

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