もう弟なんてやめてやる。
「っ、」


すると聞こえてくる
微かに漏れた息。


「…これでいいだろ」

「もう1回だけ」

「無理。つーか、こんな嫌な態度されて、まだキス求めんの?」

「だって、陸くんのこと…好き、だから……」

「………」



会うたび毎回俺に
“好き”と言ってくる明石。


好かれたいのは
お前じゃない───…


そんな感情を抑えながら
もう1度キスをした。



「これで満足だろ」

「陸くん、」

「言っとくけど、俺は好きじゃない」


振り返らずそう告げて
特別室を後にした。


「っ」


すぐに訪れるのは自己嫌悪。


口の中の気持ち悪さに
陸がトイレに駆け込んだ。

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