もう弟なんてやめてやる。
キュッと蛇口を捻って手を拭くと、

空気の悪いトイレを
出ようとして

ドアノブに触れた…その時、


「…雫ちゃん、」


男の声がした。

名前に身体が反応して
陸の動きが停止。


その呼び方を、するな…

苛立ちが俺を蝕んでいく。



「…雫ちゃん、元気?」

「………」

「いつ見ても天然で鈍感で…可愛いよね。特に笑顔が1番可愛いかな」

「っ、」

「は、何その怖い顔。お前まだ雫ちゃんに付きまとってんの?」

「………」



フッと笑うコイツは、

──────雫の元カレ。



「お前さぁ、相当気持ち悪いよ。今の歳で姉にベッタリ」

「………お前に、関係ない」



それだけ吐き捨てて
トイレから出た。

グッと手を握りしめる。

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