もう弟なんてやめてやる。
「交通事故だった…。2人とも、即死で…」

「…っ」

「父さんが、弟夫婦をお前から奪ったんだ。お前に本当の両親の記憶さえ、作らせてやることも出来なかった…」

「お父さん………」




父親から一筋の涙が流れて
肩を震わせた。

それを見て、
母親が父親の手を握る。


初めて知った事実に、
陸と雫が激しく動揺して。

言葉を失った。



「……ずっと話さないといけないって、母さんと話してた。もっと早く話せば、お前の気持ちも少しは楽になったのかもしれない。…本当にすまなかった」

「………」



俺の本当の両親は、

もうこの世には居ない……

もう、会えない…



「それで、父さん達はお前を引き取とることにした」

「……じゃぁ、何で戸籍はこのままなの?」

「弟夫婦の子どもだという事実を、消したくなかった。だから親族里親制度を使って、お前を育ててきたんだ」

「親族、里親制度…?」

「戸籍上では、父さん達と陸は親子じゃない。父さん達は陸の里親になる。だから、お前の戸籍は弟夫婦に入ったままなんだ」



陸の視線が、

戸籍謄本へ…


父親と母親の名前が目に入って、

涙が流れた。



「その制度は18歳までという決まりがある。もう、父さん達に里親としての役割は終わってるんだ。それでも、話せなかったのはこの家族を壊したくなかった」

「っ、」

「…陸、雫…隠してて申し訳なかった。でも、だからってお前たちがしてることは簡単に許せる話じゃない」

「………」

「血の繋がりは、ゼロじゃないんだ」

「……俺は、諦めないよ」

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