雨のふる季節に。
時雨は、時雨は優しいよ、と言った。
そこで、息を大きく吸って、続けた。
「時雨、泣きたいなら泣きなよ。
悲しい時は、泣くんだよ。
時雨が泣かないなら、私が泣く。
だって、そんなの悲しいよ。
いいじゃん、忘れなくても。
時雨だって、幸せになってよ。
私は時雨に幸せになってほしい」
つぎはぎの布のように、まとまりのない言葉。
だけど、それでも良かった。
時雨は私をもっと強く抱きしめて、私もその背中に手をまわして、涙を流した。
本当に好きだった、と何度も何度も時雨は言った。
嫉妬とか、そんなのじゃなくて・・・・・・
ただ純粋に羨ましかった。
時雨にこんなにも、強く思われている美緒さんが羨ましかった。
「ねえ、時雨・・・・・・?」
そう言って、私は時雨の体を離した。
十分すぎる思い出だ、これも。
時間にしてしまえば、
本当に短い間だったけれど、
私は幸せだった。