雨のふる季節に。
隠れSだ、とか思いながら私は時雨を優しく叩いた。
「うわーん。
それ、恥ずかしいの限度超えて、
恥ずかしいっすよ」
時雨は頬を指で数回掻いた。
「責任とってもらわないとね」
「へ?
だってファーストキスは、
美緒さんですよね?」
「でも、俺の大事な、
セカンドキスなんだけど。
十分、問題でしょ」
確かに、私がしたことは、
ファーストだろうと、
セカンドだろうと、十分問題だ。
「誰かさんのせいで、
雨と一緒にいろいろ流れて。
雨がきっかけで出会えたんだから、
雨が少し好きになって。
もう恋はしないって決めたのに、
呆気なく崩れちゃって・・・・・・」
「それは、誰かさんの“せい”ではなく、
“おかげ”じゃないっすか?」
「そうだなー。
じゃあ、責任とって・・・・・・
俺と付き合ってよ。
言っとくけど、
ダメとは言わせないよ」
時雨の少し恥ずかしそうな顔を見て、
私こそ照れくさくなる。
ダメなんて言うわけないっすよ、と言い、飛びかかるように抱きついた。
神様?
雨のふる季節に、
雨が名前にある男の子に、
勝手にキスをしてしまいました。
だけど、聞いて?
その人も私と同じことを、
雨のふる日にしていたのです。
それを運命と呼んでも、
決して罰あたりではないでしょう?
――end――