雨のふる季節に。
梅雨ということで、ほぼ毎日雨が降った。
5教科の授業をサボれるほど、私は頭が良くない。
授業態度で通知表を維持している私は、実技教科を抜け出すことにした。
もう、かれこれ1週間だろうか。
「こんにちわー」
何故か、いつも保健室の先生はいなかった。
つまり、いわゆる、二人きりなのだ。
「んー」
時雨は目尻を擦った。
「もしかして、寝てました?」
「ううん。
ぼーっとしてた」
「時雨って、
何気にぼーっとするっすね」
返答がなかったり、
まばたきをしなかったり、
焦点の合わない目をしたり、
時雨は時折そんなことがあった。
「考えてたんだ」
「なにを?」
そしてまた、時雨は遠くの雨を見た。
私も一緒に覗き込もうとしようか迷うけど、いつもやめる。
何か、そこだけは、雰囲気が違う気がするのだ。
「俺が1番、
好きだった人のこと」