雨のふる季節に。
その時、ちょうどチャイムが鳴った。
時雨はそれで目を覚ましたのか、窓に触れていた指を離した。
「もう保健室の先生が来る。
また、気が向いたら俺から話すよ。
じゃあ、また雨が降ったらね」
時雨はほほ笑んだ。
本当にあなたは、優しく笑う人だ。
ねえ、この込み上げてくる思いはなに?
保健室を出た瞬間、息が出来ないくらい、苦しくなった。
涙が出る。
時雨のぶんまで、泣いてあげようと思った。
有り余るくらいの涙を、全てあなたに捧げようと思ったの。
次の日も、その次の日も、雨が降って、私は保健室に訪れた。
時雨はいつも通りで、ただ一つ違ったのは、保健室の先生もいたことだった。
こんなにサボっていていいのか聞いたことがある。
大らかな保健の先生は言った。
「1時間くらいいいわよ。
どうせ上矢くんも、梅雨で引退だろうし」
二人きりじゃないことには、抵抗はなかったけど、時雨は悲しい顔をしなくなった。
それは心から悲しくなくなったんじゃなくて、どこか我慢してるようにも見えた。