-かなめひめ-
プロローグ


 <かなめひめ>、という怪談のような話を、幼い頃母方の祖母に聞かせて貰ったことがある。



 私が住む、小さいけれど穏やかな雰囲気なこの町、"白錦町"(しろにしきちょう)。

 白錦町は本当に小さな町で、町というよりかは村と言っても過言ではないかもしれない。
 その人口は100人を少し越えるくらいで、最近は発展し始めた周りの街の中に埋れつつあり、目立たなくなってしまった。

 この町を訪れる人は、日々減少しつつある。


 だが、この町はドマイナーな人たちには人気らしいという。

 神社は勿論、たくさんの田んぼや畑、水車小屋、深い森。典型的な田舎町だが、何処か不思議な雰囲気が特定の人を惹きつける、のだそうだ。

 一方の私はそんなことは微塵にも思っていなかった。それが普通だと感じていたからだ。


 そんな白錦町、私が生まれた時から住んでいる馴染み深いこの小さな町には、大昔から不老不死の<かなめひめ>と呼ばれる巫女が存在しているという。

 なんでも、自らが信仰している神に向かって、何の罪もない白錦町の住民たちを皆殺しにし、命を捧げて不老不死の力を手に入れたというのだ。


 その殺された住民たちの人数、ざっと100人はいたという話だというのだから恐ろしいものである。

 
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