-かなめひめ-
 転校生は、狼のような、睨みつけられたら思わず足がすくんでしまうような双眸で、燈たちを見据える。

 その様は、まるで獲物を品定めをしているかのようだ。


 だが、玲奈の言う通り、確かに目鼻立ちが整った...いわゆる「イケメン」であった。顔をよく見てみると、左頬に一文字の傷跡があるのが分かる。
 田中のように身体を鍛えているのか、腕は私が今まで見てきた男子生徒よりも筋肉質で太い。

 それなのに、一見すると至って痩せて見えるのは、着痩せするタイプなのだからだろうか。

 その転校生は、引き締まった唇を開くと、あまり気持ちのこもっていない低い声で話す。


「...シキガミだ。宜しく頼む」


 シキガミ。
 燈は思わず首を捻っていた。何とも珍しい苗字だなと思っていた。
 黒板に名前を書かなかったために、燈にはシキガミの漢字がわからなかった。

 何となく考えると、一つの考えが頭をよぎった。


______式神?


 いつか読んだことのある古い本に、それについて詳しく綴られていたような気がする。
 詳しくは、あまり覚えてはいないが。

 シキガミは、それだけ告げると、それ以上は何も言わずに私の方へ歩いて行き、燈の後ろの空いている席へすとん、と座り込んだ。
 隣の女子に挨拶せずに、そのまま頬杖をついた。
 なるほど、だから後ろが空いていたのか____燈は一人で納得する。


 同時に、緊張感が燈の中で増幅し始めた。


「(わ、私の後ろに...ちょい怖そうな転校生がいつもいるってことかー...!)」


 自分の後ろには常に狼がいるような感じだ。
 いつ喰われても(?)おかしくはない。
< 11 / 30 >

この作品をシェア

pagetop