-かなめひめ-
01
学校が終わり、生徒たちは次々と部活に向かうか、その他の事情で学校に残るか、下校する者に分かれて別々に行動し始める。
燈の所属している美術部は、今日は休みのために、早く家に帰れることができる。
テニス部の玲奈と別れ、履き慣れた白いスニーカーに履き替え、バッグを持ち直し校庭に出る。
その足は早足だった。
その理由はと言うと、これから始まる好きなアニメを見逃さないためだけである。
小走りで校門を抜けると、少し離れた道を歩く、見たことのある黒い背中が見えた。
高い背、犬のようなふさふさとした毛先のハネた黒髪。それだけで誰なのか特定できた。
燈は手に持っていたバッグを肩に背負うと、その人物を走って追いかける。
そして、その背中に声を掛けた。
「式神さん!」
燈の声に、その黒髪の人物...式神が、少し驚いたかのように立ち止まり、振り向いた。
燈はその隣に立つ。
「式神さんも、この道通るんですね」
若干息を荒げながらそう言う燈に、式神は、一つも表情を変えずに言葉を返す。
「あぁ。あんたもなのか」
式神はそう言いながらいきなり歩き出したので、燈は慌ててそれについていく。
式神は見た目通りの高身長で、それで脚が長いからか、一歩一歩の歩幅が大きい。
160しかない私には、ついていくにはなかなかの苦労だ。
「はい。
奇遇ですね。何処までですか?」
「神社を曲がった所」
「...あー、紅慈神社か」
神社と聞いて、燈は一つの名前を頭の中に浮かべる。