-かなめひめ-
燈は息を荒げながらも、不安定な心を何とか落ち着けて、式神にさっきの出来事を伝えようとする。
だが、今だにこびりつく恐怖心があるのか、舌がうまく回らず、言葉にすることが難しい。
それでも何とかして、緊張で固まった喉を動かした。
「変な...女に...会ったんです」
燈の震える言葉に、式神は眉を寄せ、眉間に皺を作った。
式神の表情の変化に気づかないまま、燈は話を続ける。
「それで、何か...。右手の手首をいきなり掴まれて....。
"いのちひゃっこめ"とか、"あなたのいのちをいただきます"とか...言われて...ッ!?」
その瞬間、式神が燈の右手の手首を掴んだ。
燈の驚く声も気にせずに、式神は燈の手首を持ち上げ、電灯の光に当てるようにして動かす。
先ほど、あの女に強く掴まれた箇所に、光が当たり、全貌が明らかになる。
そこには、式神も、手首を持ち上げられ釣られて見た燈も、思わず驚愕してしまう光景があった。
「ヒィッ」
「.....くそっ」
怯える声を上げる燈。その横で、顔をしかめ何故か悪態をついた式神。
光に当てられ、全貌が明らかになった、燈の手首。思わず目を逸らしたくなる。
燈の手首には、火傷のように赤黒い手の痕と、壁に絡みつく蔦のような黒い筋が、そこから手首全域に広がっていた。
それは小さく疼き、見た者を異常な不安感にさせる程だった。