-かなめひめ-
自室に戻ると、ベッドの上にすとんと座る。
そして包帯を解く。居間にいつも常備している救急箱の中に、雑に纏められていたものを取ったものだ。
____誰にも見せてはいけない。
____印は何かで隠せ。
昨日、式神にそう言われたことをふと思い出したのであった。
あまりにも纏め方が雑なため、解くのになかなかの時間を必要とした。
やっと解くと、思わずため息が零れてしまう。それを、右手首の手形や黒い筋を隠せるくらいに巻いていき、ほどけないように金具で止めておく。
その上から、そこらへんにあった黒いリストバンドを嵌める____が、何かリスカ常習者みたいな雰囲気がしてきたので、リストバンドはしないことにしておいた。
仕上がると、包帯に巻かれた手首を様々な角度から見て、何処か見えていないか探す。
何処にも異常はないことが分かると、時計を見る。
針は6時ピッタリ。
起きてから一時間経ってしまったものの、まだ余裕はある。二度寝くらいは出来そうだ。
燈は身体をベッドに投げ出し、天井を見つめる。
そして、右手を持ち上げ、包帯に巻かれた手首を見つめる。
ピントは天井から手首に移り、天井はぼんやりになって、手首だけが鮮明に映った。
「私、これからどうなっちゃうんだろう...」
燈の小さな声は、部屋の静けさに呑まれるようにして消えていった。