-かなめひめ-

「ところで、燈さーん?」

 突然、玲奈はいやらしさを含めた笑みを浮かべて、俯く燈の顔にぐぐいと急接近をした。

 いきなりの玲奈の行動に、燈は反射的に頭を素早く後退させた。
 玲奈はそれを気にせずに続ける。


「昨日、早速式神君と帰ったそうじゃない」


 玲奈の言葉を聞いた瞬間、燈はすぐさま分かり易く顔を紅潮させた。
 そしてさっきの言葉を聞かれていないか、首を少しだけ動かし後ろを振り向く。式神がいないことを確認してから、燈は顔を戻して小声で話した。


「なっ、何故それを...!」

「あたしの情報網を舐めないで欲しいわ。
貴方の下校路を使う者は少なくない。
そしてその中に、あたしの忠実なるスパイがいることもないわけではないのよ」


 そう得意気に話す玲奈に、燈は心底呆れた表情を露わにした。
 そんな燈に、まるで茶化すような口調で煽りに煽り立てる玲奈。


「早速イイ展開ですね〜?
んー?燈さんー?」

「ちっ、違うってば!そんなんじゃ...」

「照れてんじゃないわよ燈。
聞けば彼180センチとかいうじゃない。
んでもって身体は物凄く筋肉質っていうし。クールな表情もワイルドでかっこいいじゃない。
でも今だに他人との関係を持ってないのよねー、あんなイケメンなのに。勿体無い。

だから、今ゲットのために行動すべきよ、燈!」


 玲奈はそう言って、人差し指を燈に指す。
 鼻先数センチにまで迫られた指先を見ながら、燈は不満そうな表情を見せた。

 そして、ポツリと小さな声を漏らした。


「違うってば...。
彼...式神さんとは、何か、何処かで...」

「____俺に何か用か」


 後ろから低い声が聞こえて、燈は思わず口を固く閉じる。
 玲奈がその後ろを見ると、こちらを疑問の目ざしで見つめる式神の姿が。

 燈の顔は紅いままだった。
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