-かなめひめ-
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空は青かった。
雲一つなく、一点の曇りを見せない美しい群青色の青空。
今の季節...太陽の日差しが肌に痛いくらいに感じる真夏には、あまりにも似合いすぎる空と言える。
窓の向こうから聞こえる、無数の蝉の騒がしい声。
木々は若々しい緑葉を微風に揺らしていた。
外が真夏色に染まっている中、対しての私は窓側の机の上にて、伸びきっていた。
窓側なものだから真夏の太陽の日差しを直に受ける羽目になっている。今更ながら、カーテンはついていない。
つまりは熱中症で倒れてもいい、ということを意味しているのだろうか。
ならば倒れたい。ここより保健室の方が冷房が効いていて遥かに涼しいはずだ。
「あっ...つ....」
左側頭部に赤いリボンを付けた少女は、苦しげに半開きの口からそう漏らす。
額から流れる脂汗もそのままに、団扇代わりの下敷きを持った手を力なく上下に扇いでいる。
吹いてくる風は、たまらなく温い。しかし、扇がなければやってられないのだ。
ミーン、ミンミン。
ツクツクボウシ、ツクツクボウシ。
蝉の声が五月蝿い。聞いているだけで暑苦しい。
少し黙っていて欲しいものだ。
少女は、有宮燈≪アリミヤアカリ≫。
ここ、白錦町東に位置する「白錦東高等学校」の一学期真夏真っ最中の二年生である。