-かなめひめ-
「あっかりー、生きてるー?」
眩むような暑さにのぼせていると、不意に頭上から声____凛とした少女の声____を掛けられた。
机に倒した身体を起き上がらせる気力も湧かないため、燈は半開きの目だけを動かした。
こちらの顔を覗き込んでいる、引き締まった顔立ちの小柄な少女が、そこにいた。
茶髪のポニーテールを揺らし、切れ長な瞳で、容姿端麗なその外見からは、一見すると冷静沈着な印象を受ける。
が、その肝心の内面は、冷静沈着な印象とはまったくかけ離れているものであった。
「うわー、あっかりん、まるで肉まんみたい。
頭から湯気が出てるよ」
変なことを唐突に言うのも、彼女の性格とも言える。
自分が悶える程の暑苦しさをものともにしていなそうな眩しい笑顔に、燈は突っ伏しながら呆れ混じりの息を吐いた。
「...もー、"玲奈"は平気なの?
汗一つかいてなさそうじゃない」
燈の言葉を聞いた彼女___南出玲奈≪ミナミデレナ≫___唯一無二のこの親友は、この暑さを吹っ飛ばせそうな笑顔と、可愛らしげな笑い声を上げた。
「ふふん、あたしはこれくらいでのぼせるほど、身体は軟弱ではないんでね。
鍛えればどうってことはないわ」
「はいはい、テニス部補正、テニス部補正」
燈の口から、また溜め息が出た。