-かなめひめ-
 燈も玲奈も十分に落ち着いてきたところで、燈たちの話題はイケメン転校生の事に切り替わった。

 燈はとりあえず、聞きたいことを玲奈にぶつけてみることにした。


「その転校生の名前とか、知ってるの?」

「知らない。男子ってしか」

「その人、何処から来たの?」

「わかんない」

「せめてどんな人か」

「かっこいいってだけ」


 聞いてみた自分が馬鹿だったようだ。

 玲奈は頭脳明晰なはずだ。これまでの定期テストでは常に上位に食い込む程なのだ。

 だがこれはないだろう。自分から話題切り出しておいて知らないとは何なのだろうか。
 名前さえ知らないというのは痛手過ぎる。


 ...因みに自分はお察しだ。私...燈の頭はあまりよくない、とだけ告げておこう。
 数学は苦手過ぎて半ば諦めている。


 燈は頭を片手で抱えながら、簡単な質問であろうものを改めて玲奈に聞いてみる。


「...じゃあさ、その人はいつ転校するの?」

「今日」

「今日!?」


 いきなり過ぎる。今日転校してくるのか。
気合入り過ぎではないのだろうか。

 玲奈は驚く燈を面白がるように、笑って見せた。


「でもいいんじゃなーい?
イケメンは早く見たいものでしょ、燈とて」

「私は玲奈とは違うっつーの」


 燈も唇を尖らせた。




____さて、どんな人なのだろうか。
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