Dear・・・
「もしもし、慶介です。覚えてますか?」


恐々と尋ねる。


「おお!慶か!信じていたぞ!絶対また連絡くれるって!」


後ろを走る車の音が相手の声を聞き取りづらくさせる。


「すまんな。今、出先で周りの車の音がちとうるさいが」


「いいえ、大丈夫です。あの…この前は翔太がすいませんでした…」


「いや!大丈夫だ!慶の方こそ大丈夫だったのか?翔君とはうまくいったのか?」


「翔太とは…何とか…で、あの朝は本当にすいませんでした」


「全然気にしなくていいぞ。翔君は落ち着いたのか?もう俺は慶とメール出来ないのか?」


「翔太は大丈夫です。メールは…アドレス変わっちゃったんですけど、もし治さんがまた相談にのってくれるって言ってもらえるなら…メールしていいですか?」


「俺は全然構わないぞ!」


快く引き受けてくれた事に慶介はほっとした。


自分の居場所が見つかった気がした。



すると、下から祖母の呼ぶ声がした。


「慶ちゃんいつまで寝てるの!翔太君来てるから起きなさい!」


翔太という言葉に慶介は焦り、電話口へと向かう。


自分の名前を何度も下から呼ばれる。


「すいません。ちょっと友達に呼ばれました。後でメール送りますので」


そう告げ相手の言葉を一切聞かず、一方的に電話を切った。


電話を切ると、さっと起き上がり、祖母に返事をする。


「起きてるよ!翔太にちょっと待っててもらって」


そう言い、急いでベッドから飛び降りる。


布団の上に寝ていたハツもたまらず起きた。


慶介はタンスを探り服を選ぶ。
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