Dear・・・
江ノ島に行った後は、水族館に行き、その後食事をした。


これが男女であれば絶対に恋人同士に見えたであろう。


何度か触れる手を、互いに気にしながらも決して繋ぐ事はなかった。





日も暮れ辺りが暗くなる。


「そろそろ帰ろうか。家まで送る?」


慶介の言葉に、翔太は小さく首を振る。


「じゃあ途中まで送るよ」


そう言い、歩いていく。


中学校の辺りに着いた。


「ここでいいよ」


翔太の言葉に慶介は頷いた。


「それじゃあ、明日な」


慶介は手を振り、背を向け歩き出した。


翔太の呼び止める声がする。


「あのさ、俺…慶介の事いつも一番に考えてるから…本当に…あのさ…」


最後の方は消え入りそうな声だった。


慶介はその言葉に今までに無い喜びを覚える。


しかし、表情には出せない。


「ありがとう…」


慶介がそう言うと、翔太は背を向け歩き出した。






翔太は自分が憎くなった。


どうして好きだと言えないのか。


慶介が何かに迷いを感じているのは分かっているが、確信に触れる勇気がない。


好きな気持ちは確かなのに、慶介の返答に自信が持てない。


そして自分の気持ちにも確信が持てない。


愛する者を疑う自分が惨めでしょうがない。


翔太はこんな弱い自分を憎しみ、悔しさから涙が止まらないでいた。
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