Dear・・・
一方、慶介も自分の不甲斐なさに嫌気がさしていた。


どうしてあそこで自分も翔太を一番に想っていると言ってやらなかったのか。


翔太が次に言おうとしてたであろう“好き”の二文字は感じていた。


しかし、自分から言う勇気がなかった。


本当に次に来る言葉が“好き”かも曖昧である。


どこかに逃げ道を作る、弱い自分。


分かっているのにどうも出来ない。


慶介は悔しくて涙が頬を伝っていた。


辺りは薄暗く、すれ違う人は誰も慶介が泣いているなど思わない。


家に帰ると、急いで部屋に入り、ベッドへと倒れ込んだ。


そして、慶介は声を立てる事無く泣き続けた。
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