Dear・・・
「ごめん、俺ちょっと電話してくるわ。親から電話あったみたいだし」


翔太が席を立った。


「とか言いつつ、女なんじゃないんですかあ?」


笑って誰かが言う。


それに「やだあ」と叫ぶ女。


「そのまま帰ってただ食いすんなよ」


智貴が言う。


「はいはい」


鼻で笑って翔太が店を出た。


翔太にとって今のやり取りなどどうでもよかった。


あの番号とあの朝のメールは繋がるのだろうか。


翔太の頭はそれでいっぱいだった。



辺りは暗く、向こうで凛として聳え立つランドマークタワー。


横の港からは潮の香りが漂ってくる。


しかし、翔太にはそんな雰囲気を味わう余裕などなかった。


店の横の壁にもたれかかり、人の目に付かない事を確認すると、先ほどの番号に非通知発信をした。
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