Dear・・・

Bar[Keisuke.side]

翔太と入れ違いで慶介がトイレから帰ってきた。


「遅かったね」


優人が声をかけた。


「ああ、それがさ――」


「でっけえの出た?」


礼人がケラケラと笑いながらが言った。


周りも一緒になって笑っている。


理解していない慶介は、返事に困る。


「何でこんな遅かったの?」


兄の言葉を無視し、優人が慶介との会話を再開させた。


「だからウンコだって」


「お兄ちゃんは黙ってて」


再び横は入りする兄の呆れた言葉を一蹴する。


慶介は大体を理解した。


「トイレってか二階行ったら知らない女の子がいてさ」


「え、智貴さんが連れ込んだ?」


博昭が尋ねる。


しばらくの間、智貴の返答を待つため静かになった。


智貴はその子が誰なのかを懸命に考えている。


「あたしの姉の娘さんだよ。だからともちゃんのいとこ」


全く思い出しそうにない智貴を見兼ねて母が言った。


「あーそうだ、春奈が来てるんだった」


やっと思い出した智貴はわざとらしく手を打ってみせる。


「へえ、智貴くんのいとこなら結構かわいいでしょ?」


智貴の隣の女が聞く。


私の方が可愛いと言って欲しげだ。


「いや…俺と似てねえし…唇、たらこだし…まあ、愛嬌のある顔だな」


あえて核心には触れようとしない智貴。


もう会話は慶介の遅かったことから、智貴のいとこの話へと変わっていた。


慶介はやっと落ち着いたように、ビールグラスに手を伸ばし一口飲んだ。
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